太平洋を望む宿から、三陸の未来を想う
目の前は三陸復興国立公園。景勝地「三王岩」を、展望台のさらに上から見渡すように建つ「渚亭 たろう庵」。
全室露天風呂付き(内風呂もある)、三陸海岸屈指のプレミアムな宿です。
右下の建物群が「たろう庵」。絶好のロケーション!(写真:渚亭たろう庵)
窓が大きく、広々とした客室は開放感たっぷり。食事も部屋食や共用のダイニングではなく専用個室が用意され、すぐ側の厨房から地元・三陸の食材を使った出来立ての料理が、一皿ずつ運ばれてきます。また展望風呂も貸切予約制で「完全プライベートな旅時間」を心ゆくまで満喫できるのが魅力。遠方から通うリピーターも多い、というのも納得です。
そんな「たろう庵」がオープンしたのは2015年。
以前は「たろう観光ホテル」という名前で、この高台のふもとにありました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災によって「たろう観光ホテル」は4階まで浸水、2階までは柱のみを残し流失。現在は、津波の教訓を伝える震災遺構として保存されています。
「たろう庵」へ向かう道の途中に「たろう観光ホテル」があります。(写真:渚亭たろう庵)
震災時、ホテルの6階から津波のようすを撮影したという支配人の松本さん。
「この映像を通して津波の恐ろしさを知ってもらい、大切な命を守る教訓として伝えたい」という思いから、希望者にはチェックアウト前に5分程度の「語り部」を行なっているそうです。
ダイナミックな景色の美しさと、海の幸を育む豊かさと、そして度重なる津波の歴史も含めて三陸なのだ、と話す松本さんの言葉が、時間が経つほど胸に残って…。本誌では触れることができなかったので、ここで紹介したいと思いました。
そう遠くないいつか、私もたろう庵に泊まって三陸の絶景と海の幸を堪能したい。そして津波の怖さと、それを伝える松本さんの思いも受け取りたいなと思っています。よし、働こう。
編集部:鈴木いづみ