『チャーシューの月』

村中李衣 著/佐藤真紀子 絵・小峰書店 刊

 主人公を引き立てつつストーリーにアクセントを加え、時にはキーパーソンにもなる。小説において、欠かせない存在の「バイプレーヤー」。作品の成功の可否を握り、どれだけ魅力的なバイプレーヤーが登場するかで物語の面白さも変わってくる。もちろん、その役柄は「人」でなくても構わない。犬や猫といったペットでも、主人公の愛車でも、時にはチャーシューでも……。
 本書の舞台は赤ちゃんから中学生までが暮らす児童擁護施設「あけぼの園」。ある日、父親に連れられて、小学校入学を控えた明希がやって来る。初めての集団生活に戸惑いながらも、同じような境遇の子どもたちと暮らすなかで、徐々に心を開いていく明希。そんななか行方不明だった母親が現れ、一緒に暮らすことを提案するが……。
 地元の擁護施設で子どもたちと向き合う仕事をしてきた著者が描く物語は、フィクションとノンフィクションの狭間を漂う。園内でのいじめや、家庭内虐待にも踏み込み、決してお涙頂戴だけでは終わらせない。そんな著者の選んだバイプレーヤーは、なんとチャーシューだ。
 「あけぼの園にくる前、とうちゃんとはじめてラーメン食べた。チャーシューメン。あのお月さま、チャーシューのお月さまだって。」
 連絡も途切れてしまった父親。それでもチャーシューメンの想い出を胸に、明希は待ち続けていた。物語のラスト、園のリーダー格の信也は夜食に具たくさんのラーメンをリクエストする。
 「今夜も、チャーシューの月だったりして」
 この瞬間、夜空に浮かぶチャーシューの月は、明希父子を繋ぐ絆であり、あけぼの園で暮らすこどもたちの希望の象徴になったのである。
 なんとチャーシューがいい味を出していることだろうか。ワンタンメンや、マーボーラーメン、もやしラーメンではこうはいかない。
 本書は「児童書」に分類されるが、読者を選ばないのでぜひ手にとっていただきたい。晩酌しながら読むのも一興だろう。つまみはもちろん「チャーシュー」で。
 投げすてた自転車が、銀色に光る。
 明希がわたしのとなりにしゃがみこんで、月を見上げた。
 「お月さま、あきのラーメンの中にいた。ずっと前、かーさんとここへきたときもいた」「はあっ?」「あけぼの園にくる前、とうちゃんとはじめてラーメン食べた。チャーシューメン。あのお月さま、チャーシューのお月さまだって。でも、その前もいた。かーさんといっしょのときも、いた」「おまえ、またおかしくなったんとちがうか?」
 明希のからだがふるえているのに気づいて、思わず明希のからだをだきしめた。

―『チャーシューの月』― より

一風亭の味を家庭でも肉汁滴るジューシー焼豚

1994年、盛岡市にオープンした一風亭。お客さんから「チャーシューが美味しいから厚切りにしてみては」と言われ、商品化したところたちまち人気に火がついた。見た目の厚さから「げんこつチャーシュー」と名づけ、店の名物メニューに。5 時間じっくり醤油に漬け込みながら煮込んだチャーシューは、旨みがつまってジューシー。おつまみに、おかずの一品に、食卓で一風亭の味をどうぞ。

  • 一風亭 高松店

    岩手県盛岡市高松4-1-36
    TEL 019-662-3444
    営業時間/ 11:00 〜 22:30(L.O 22:00)
    定休日/第2、第3火曜
  • 一風亭 矢巾口店

    岩手県紫波郡矢巾町大字西徳田第5地割田郷200-1
    TEL 019-611-2080
    営業時間/ 11:00 〜 22:00(L.O 21:30)
    定休日/第2、第3火曜
  • 一風亭 webショップ

    「一風亭の厚切りげんこつ焼豚」は、
    矢巾町のふるさと納税の返礼品に
    選ばれました。
    https://ipputei.com