家族のようなまちのパティスリー
rakra114号の特集は「チョコレート・ショータイム」。
「絶品・ショコラなケーキ」を求めて、一関市の「Påtisserie fuji」を取材しました。見た目も美しい「モガドール」は本誌でご紹介をしていますのでぜひご覧ください。
外観もおしゃれな「Påtisserie fuji」があるのは、日本百景のひとつ「猊鼻渓」がある東山町。猊鼻渓は、高さ100メートルの断崖がそびえる約2kmの渓谷で、舟下りが人気です。
2014年に店を開いた小野政隆さんは、猊鼻渓の奇岩の名が付く銘菓「獅子が鼻」で知られる「冨士屋製菓」の3代目。洋菓子を学び「Påtisserie fuji」をオープン。「獅子が鼻」も販売しながら、新商品を次々と生み出しています。
ショーケースに並ぶケーキは、東山という土地柄も意識して生まれたものだと話す政隆さん。
「モガドールを求めてわざわざ訪れてくれる方や、猊鼻渓を訪れる海外からの観光客もいますが、東山に暮らすお客様は洋菓子に馴染みが無い方も多いんです。杖をついたおじいちゃんや子どもたちがお店に来てくれるので、見た目も味も価格も、まちのみなさんの好みと自分が表現したいことをミックスさせて商品を生み出しています」。
「Påtisserie fuji」は、東山の人たちにとって身近な洋菓子店。
この日も、地元の東山小学校の6年生が、rakraの取材の様子を見たいとお店を訪れていました。昨年から東山小学校では、「総合的な学習の時間」の中で、東山の良さを広めるため地域のお店や人を日頃から取材しているそうで「Påtisserie fuji」とも良好な関係が築かれていました。
「子どもたちが来るとついついサービスしてしまうんですよね」と話す政隆さん。子どもたちからの質問に丁寧に答える姿からも、地域に根づいたお店であることが伝わってきました。
この東山小学校の活動がなんとも素敵で、取材の後に、「いーすとまうんてんギャラリー」というイベントを開催し、実際に取材したお店の商品を販売するのだと教えてくれました。
(今年のイベントは10月22日(土)に開催し終了)。
「昨年の子どもたちもすごかったんですよ。まちの歌もつくって、マルシェの売上金でCDを自作してまちに配ったんです。シンポジウムも開いて、まちづくりとは、と議員さんにも質問したりして」。
こうした様子を見た東山の大人たちが感化され、今年の9月に大人たちによるマルシェ「東山うれし市」が開催されたほど。
取材が終わる夕方には、帰路につく小学生に「おかえりなさい」と声をかける地域の大人たちを多く見かけ、見知らぬ私たちに「こんにちは」と挨拶してくれる子もたくさん。子どもからお年寄りまで、まちが家族のような距離感であるからこそ生まれる「Påtisserie fuji」のお菓子があるのだなと感じます。
東山町は一関市街からも車で約30分の山間にありますが、この空間を味わうだけでも訪れる価値ありと思える心温まる場所でした。
本誌で紹介しているモガドールと一緒に、ぜひほかのお菓子も求めてみてください。「サレ」もおすすめです!(サレはいくつか種類があり、「エダムチーズと海塩」はお酒好きの方に人気のようですよ♪)
ライター:佐藤春菜、写真:鶴飼英絵