植物にも人間にも心地良い北国のロックガーデン
テーブルの中央にあるのは、小さなロックガーデン。酒を飲み音楽を聴きながら、寄せ植えで、室内に「自分の庭」を作る。そんな秋の夜長の過ごし方を教えてくれたのは、盛岡市内で「ちきゅうや」を営む森川和輝さん。カレーの店として知られる同店だが、森川さんの好きが高じて、3年前から大館支店で、植物の販売やグリーンによる店舗デザインなども行っている。
ロックガーデンとは、乾燥を好む植物と石を組み合わせた植栽。水やりも剪定もほとんどする必要がない、手間要らずの園芸だ。今回、寄せ植えの主役にするアガベは、寒さに強い品種が多いので、北東北の気候でも育てやすいという。 「アガベは、北東北でこそカッコ良く育ってくれる植物だと思っています。マイナス25度でも枯れない品種もありますし、寒さに弱いと言われる品種でも、氷点下にならなければ越冬できます。秋のうちに、室内に小さな庭をつくれば、冬でも楽しむことができますよ」。
遊び心満載の森川さんは、この日、DIYで組み立てたという木のテーブルに廃材のシンクをはめ込み、30×50センチの「自分の庭」を作り始めた。乾燥を好む植物に適した水捌けの良い用土を、自らブレンドする。低層には大粒の軽石、中層には小粒の軽石や腐葉土などを混ぜ合わせた土、上層には化粧砂利と、3層にするのがポイントだ。用土はホームセンターで購入できるので、誰でも気軽に始めることができる。
寄せ植えする植物は、アガベの中でも人気の品種のパリー、ホリダ、チタノタ。アクセントに、ヤシ科のチャメロプスを選んだ。主役となるパリーから植物の配置を決め、石を並べていく。この「景色」を考える時間が最も楽しい、と森川さん。「正解も完成もないので、自分の庭は自分の手で、楽しんで作ってほしいですね」
アガベを室内で育てる際は、植物育成用ライトを用意したい。「インテリアを邪魔しない程度の1灯で充分。夜は消して休ませてあげて。エアコンの風を直に当てると植物のストレスになるので、サーキュレーターで室内の風を動かし、新鮮な空気を周してやります」。
森川さんが目指すのは、植物と人間の共生。どちらにも心地良い環境を作ることが一番だと考えている。何より、「かっこいい」とか「好き」とか思う自身の気持ちに素直だ。植物を育てることを心から楽しんでいることが伝わって来た。
植物とアートの融合
「自分の庭」にアートを施して、より個性的な風景を作りませんか? そう言って、森川さんが提案してくれたのが「NANDARA」だ。アーティストのDJ R.I.P.さんが生み出した曼荼羅のような模様を心のままに描いていく表現方法で、描く人の個性が如実に現れるという。
「風がどう当たっているかとか、今は左に進みたい気分とか、目に見えないものや形のないものを感じた通りに描いていきます。これは、私がずっと描き続けられると探し当てた模様ですが、三角を描き続ける人もいれば、違う形をいくつも描き続ける人もいます」とR.I.P. さん。描く道具も素材も自由で、波動に寄り添うように手を動かす。
「自分の内側にあるものを見る練習だと思っています。自分はなぜそれが好きで、ときめくのか。それを続けていると、いつの間にか描いているものが絵になっているんです。森川さんの庭作りと似ているかもしれません」。
森川さんの「庭」に、寄り添うように描かれたNANDARA。時刻はまもなく23時。童心に帰った大人たちの夜は、あっという間に更けていく。
コースターや石など、描く対象は無限だ