こんにちは。
薬剤師の目線でいますぐ誰かに話したくなる「薬の豆知識」をお届けしております。

本日は、便秘のお話です。
まず、便秘ですが、便秘はれっきとした消化器疾患であり、「糞便が腸管内に異常に長く停滞したり、通過時間が異常に延長したりして、排便回数や排便量が減少した状態」をいいます。

一般的に、毎日排便がないと便秘だと思われがちですが、そのような定義はありません。
実は、2〜3日に1回の排便でも、お腹の不調や張りがなければ便秘薬を服用する必要はないのです。

では、なぜ便秘が起こるのでしょうか?
様々な原因がありますが、本日は
① 水分量の不足   ② 食事、運動の影響  ③ 薬の影響 の3つについてお話したいと思います。

・水分量の不足
 便の組成を分析してみますと、最も多いのが水分で70〜80%を占めています。
(残りは 10〜20%: 食べカス、腸の細胞、 10%: 腸内細菌)
 つまり、水分が少ないと便が固くなり出にくくなってしまいます。
 1日でも便が出ないと肛門が切れてしまうような方は、水を今よりもたくさん飲んでみると便が軟らかくなり排便が促されるかもしれません。個人差がありますが、1日に2L程度の水を飲むと良いと言われています。

・食事、運動の影響
 便は腸が動くことで排泄されます。
腸内の物質が少なすぎて刺激されないと、指令が出されないので腸は動きません。 
ダイエットなどで食事量が減ると便が出にくくなる原因がこちらになります。
しっかりと食事を摂り、さらに腸の中で膨らむ食物繊維をしっかり摂ることで腸が刺激されて動き始め、排便が促されます。
また、一見関係なさそうに感じますが、体を動かすことで腸も動き始めます。運動も大切な因子です。

・薬の影響
 病気の治療を目的に服用している薬の副作用で便秘になることもあります。
 例えば、抗コリン薬やカルシウム拮抗薬、抗がん剤を服用していると便秘になりやすいです。
 今服用しているお薬はどうなんだろう?と疑問に思った際には、医師や薬剤師に聞いてみましょう。

最後に、3種類の便秘薬についてお話したいと思います。

1.センノシド、センナ、ピコスルファートナトリウム、ダイオウ など
 大腸に刺激を与えて動かし、排便を促します。
 刺激を与えるのでお腹が痛くなりやすい薬です。また長期間服用を続けると効かなくなることがあります。

2.酸化マグネシウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネート など
 腸内の水分量を増やし、便を柔らかくするので自然に近い排便となります。
 腎臓に疾患がある方は服用してはいけません。

3.プランタゴ・オバタ (種子の外皮を粉砕したものがサイリウム)
 成分自体が、大腸で水分を含むことで膨らみ、便のかさを増やし排便を促します。
 食物繊維を摂取するのと同じ効果です。

ちなみに、お薬を服用してから6〜11時間で効果が出るとされていますので、就寝前に服用すると翌朝から昼にかけての排便が期待できます。
冒頭にも述べましたが、排便が毎日なくても不調がなければ便秘薬を飲む必要はありません。逆に不必要に便秘薬を服用することで腸の動きが鈍くなり症状が悪化することもあります。

長期に服用する必要を感じている場合には一度、受診することをオススメいたします。

杉山育美
岩手医科大学薬学部 准教授 博士(薬学)
薬剤師
スポーツファーマシスト
アスリートフードマイスター
薬剤師を身近に感じてもらいたいとSNSなどを通して発信中。
アスリートやサポートスタッフ、ご家族に対してアンチ・ドーピング活動をすると共に勝利のためには健康であることの重要性もお伝えしている。
近年はアスリートを含む女性の健康サポートにも力を入れている。